腰の曲がった骨粗鬆症の患者さんには、胃食道逆流症が高頻度に存在する!とこの報告をまとめた埼玉医大かわごえクリニックの宮島剛氏(埼玉医大整形外科医師)は、日々、骨粗鬆症専門外来で胃食道逆流症の合併者を拾い上げ、患者に応じた治療法を選択している。
「骨粗鬆症患者の診療は長期戦です。胃食道逆流症を合併している場合は、特に患者さんが途中で離脱しないようにするために、その患者さんの生活の質、すなわちその人がどれだけ人間らしい望み通りの生活を送ることが出来ているかを考えた治療が大切です」と宮島剛氏は語っております。
2006年、かわごえクリニックが開院したことをきっかけに宮島医師の元を訪れたのは、76歳女性のAさん。43歳で子宮脱のため卵巣を摘出し、1999年から4年間、別の医療機関で骨粗鬆症の治療を受けていた。だが、担当医による説明が少ないことから、自らの判断で治療を中断してしまっていた。
宮島氏は、初診患者全員に対し、通常の問診表以外に、自覚症状から胃食道逆流症GERDの有無を判別するためによく使われている「QUEST問診表」の記載を求めている。QUESTの結果が6点以上なら胃食道逆流症あり、4〜5点なら胃食道逆流症疑い、3点以下なら胃食道逆流症なしと判断するが、Aさんの結果は5点で、「胃食道逆流症の疑いあり」だった。
自身が胃食道逆流症を患った経験をきっかけに、骨粗鬆症患者の中から胃食道逆流症を拾い上げるようになったという宮島氏。
2005年5〜9月には、埼玉医大とかわごえクリニックの骨粗鬆症外来を受診し、後彎変形(円背・亀背)を認めた103人(平均年齢78.3歳)を対象に、初診時にQUEST問診表を用いて胃食道逆流症の発症頻度を調査しました。
その結果、QUESTが6点以上の胃食道逆流症患者は18人(17%)、4〜5点の胃食道逆流症疑い患者は23人(22%)だった。
つまり、疑い例を含めれば、骨粗鬆症による円背および亀背の患者の約4割が胃食道逆流症を合併していることになります。
「胃食道逆流症合併者が多いのは、骨粗鬆症による前かがみの姿勢が原因です。前かがみの姿勢になることにより、腹部が常に圧迫され腹圧が高まるため、逆流を引き起こしやすくなるのではないか」と宮島氏は結果を説明されております。さらに、骨粗鬆症の患者さんの多くが高齢者です。高齢者になると加齢によって胃の噴門圧が弱まり、胃液の逆流を防ぐ役目をする活約筋が緩むことで、食道への逆流を防げなくなることも胃食道逆流症発症の要因となります。
「腰痛などの痛み止めに使うNSAIDsは、胃酸分泌を促進し胃や腸に潰瘍を引き起こします。また、骨粗鬆症の治療薬であるビスホスホネート(BP)製剤も、うまく服用できずに食道にとどまると、副作用として食道粘膜に炎症を引き起こします。」と宮島剛氏は語る。
以上の理由により骨粗鬆症患者は、胃食道逆流症を含めた消化器疾患を非常に引き起こしやすい環境にあると言えるだろう。
2008.12.26(日経メディカル)より抜粋
(出典:吉田智治ほか.日本臨床.2004;62:1455-8.)